解体工事による振動は規制されている?クレームを避ける対策を4つ紹介
- 家の解体
- 2024.03.21
今回は「解体工事の振動によるトラブルを避けたい」と思っている方に向けて、振動の大きさに関する規制やクレームを避けるための対策を解説します。トラブルが起こった際の対処法も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
解体工事の振動を規制する法律がある
解体工事で発生する振動は「振動規制法」によって規制されています。振動規制法とは、住民の安全や安心を脅かさないよう、解体工事を含む特定建設作業によって発生する振動を規制する法律です。振動の大きさや作業できる時間帯などの基準が定められており、解体業者はこれらの決まりを守って工事をしなければなりません。
許容される振動の大きさと作業可能な時間は、工事場所が「第1号区域」と「第2号区域」のどちらに該当するかによって異なります。第1号区域は主に住宅地や商業地域、第2号区域は工業地域を指します。それぞれの振動に関する規制は、以下のとおりです。
第1号区域
振動の大きさ | 敷地境界線において75dBを超えないこと | |
作業可能時間帯 | 午前7時~午後7時 | |
1日あたりの作業時間 | 10時間以内 | |
作業可能期間 | 6日以内 | |
作業日 | 日曜日、その他の休日でないこと |
第2号区域
振動の大きさ | 敷地境界線において75dBを超えないこと | |
作業可能時間帯 | 午前6時~午後10時 | |
1日あたりの作業時間 | 14時間以内 | |
作業可能期間 | 6日以内 | |
作業日 | 日曜日、その他の休日でないこと |
参考:環境省「振動規制法」
振動規制法では75dBまでが許容範囲として定められています。振動の大きさの目安は、以下のとおりです。
振動レベル(65~75dB)
同じ振動レベルの震度 | 震度2 |
人の体感 | ・屋内で静かに過ごしている人の大半が揺れを感じる ・眠っている人の一部が目を覚ます |
屋内の様子 | 電灯などの吊り下げているものがわずかに揺れる |
振動レベル(75~85dB)
同じ振動レベルの震度 | 震度3 |
人の体感 | ・屋内にいる人のほとんどが揺れを感じる ・歩いている人で揺れを感じる場合もある |
屋内の様子 | 棚にある食器類が音を立てることがある |
これらの振動の目安からわかるように、75dBの基準を守っていても、近隣住民の多くが揺れによる影響を受けるといえます。なお、市区町村や特別区長が振動規制法の基準を超える振動により、近隣住民の生活に著しい影響を与えていることを認めると、改善勧告や都道府県公安委員会への要請が実施されます。
解体工事の振動の原因
解体工事による振動の原因は、主に以下の3つが挙げられます。
- 建物の解体作業
- 重機の搬入・搬出
- 掘削
振動は建物を解体するときだけでなく、重機を運んだり地面を掘ったりするときにも発生します。解体工事の振動の原因を詳しく見ていきましょう。
建物の解体作業
建物の解体中は、重機で取り壊したときの衝撃や、建物の一部が落下することによって振動が発生します。なかでも、建物と地盤の繋ぎ目部分にある基礎部分を解体したときの衝撃は地面に直接伝わるため、近隣で大きな振動が発生しやすくなります。
重機の搬入・搬出
解体工事の現場周辺では、重機の搬入・搬出によっても振動が発生します。解体作業で使う重機は、1トンを超えるものが多くあります。重い重機を乗せたトラックが走るとその衝撃が地面に伝わり、振動が起こりやすくなるのです。
掘削
掘削とは、土や砂などを掘る作業を指します。解体工事では、基礎や井戸、浄化槽などの地中埋設物の撤去や樹木の抜根をする際に掘削が行われます。掘削は重機で地中を掘り進めるため、地面から直接周囲に振動が伝わってしまうのです。
解体工事の振動に対するクレームを避けるための対策
振動規制法に従って作業を進めていても、解体工事で発生する振動や騒音をゼロにすることはできません。そのため、近隣住民には何かしらの影響を与えてしまうこととなります。
一般的に解体業者は、養生シートの設置や防振機能のある重機の使用などで、振動を抑える対策をしています。このような対策に加え、施主自身も解体業者と一緒に近隣挨拶に行ったり、作業時間に配慮してもらえないか相談したりすると、近隣住民のストレスを軽減しやすくなるでしょう。
ここでは、トラブルを避けるために解体業者が行っている対策や、施主ができるクレームを防ぐための対策を解説します。
近隣住民に挨拶をする
解体工事の振動によるクレームを防止するには、工事前に近隣住民へ挨拶をすることが大切です。事前に解体工事を行う時間帯や期間、作業内容などを伝えておくことで近隣住民が感じるストレスを軽減しやすくなります。
一方、事前に挨拶せずに解体工事を始めると、近隣住民は心構えのない状態で振動や騒音の影響を受けることとなり、不信感が募る可能性があります。近隣トラブルを防ぐためにも、解体業者の挨拶まわりに施主も同行するのがおすすめです。
養生シートを設置する
解体工事では、建物全体をカバーするように建物より少し高めの養生シートを設置するのが一般的です。養生シートには、振動や騒音を抑えたり、工具の落下を防止したりする役割があります。
そのため、養生シートが設置されていなければ振動や騒音が近隣にダイレクトに伝わってしまいます。このような状況を防ぐためにも、施主は現場に足を運んで養生シートがしっかり設置されているかを確認することが大切です。
なお、防音や防振に特化した養生シートもありますが、通常の養生シートから変更すると、施主の費用負担が大きくなる可能性があります。より防振・防音効果の高い養生シートの利用を検討する際は、予算とのバランスを考慮したうえで判断しましょう。
防振機能の備わっている重機を使う
解体工事で使用する重機は、種類やアタッチメントによって、発生する振動の大きさが異なります。なかには、防振機能の備わっているものもあるので、振動が気になる場合は解体業者に相談してみましょう。
また、人の手で解体する手壊し解体に変更することでも振動を抑えられます。しかし、手壊し解体は人手が必要になったり工期が延びたりすることで、施主の費用負担が増える可能性があります。なお、重機を使用して工期を短く抑えた方が近隣住民のストレスを軽減できるケースもあるため、あくまでも1つの手段として検討しましょう。
作業時間に配慮する
解体工事の振動によるクレームを抑えるには、近隣住民がストレスを感じにくい時間帯に作業するのも効果的です。振動規制法では、第1号区域で解体工事ができる時間帯を午前7時から午後7時までと定めています。
しかし、午前7時には眠っている人がいたり、午後7時には家族で夕食を食べたりしている人も多いでしょう。そのため、早朝や夕方以降の作業は、近隣住民にとって大きなストレスになる可能性があります。近隣住民の生活に配慮して午前9時から解体作業を始めるなど、作業時間を工夫するとクレームが発生しにくくなるでしょう。
なお、どの時間帯に解体作業を行うかは、業者によって異なります。事前に作業時間を確認したうえで、早朝や夕方以降の作業は控えてほしいなどの要望がある際は、相談してみましょう。
【ケース別】解体工事の振動でトラブルになったときの対処法
振動規制法に従ったうえで近隣住民に配慮しながら解体工事を進めていても、クレームが起こる可能性があります。クレームを放置すると近隣住民の不満はさらにたまってしまうので、可能な限り早く対応することが大切です。
ここでは、以下の3つのトラブルが起こったときの対処法を解説します。
- 解体工事の中止を求められたとき
- 金銭を要求されたとき
- 隣家が損傷したとき
それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
解体工事の中止を求められたとき
近隣住民から解体工事の中止を求められたときは、作業時間の調整などの妥協案を提示するのがよいでしょう。解体工事の中止を安易に受け入れると作業の再開が難しくなったり、再開できたとしても再び中止を求められたりする可能性があります。
解体工事の中止を求められても、容易に承諾せず、別の方法で不満を解決できないかを解体業者と検討してみましょう。
金銭を要求されたとき
慰謝料などの金銭を要求されても、すぐに支払う必要はありません。振動規制法を守らずに作業を続け、近隣住民に大きな被害を与えた場合、裁判で支払いを命じられる可能性があります。このような場合を除けば、慰謝料を支払う義務はないため、工事の違法性がないことを主張しましょう。
隣家が損傷したとき
建物を解体するときに廃材の飛来や振動で隣家の屋根や壁に損傷を与えてしまった場合は、解体業者が対処します。なかには、建物が古かったり元々損傷していたりするケースもあるので、慎重に対応する必要があります。
なお、解体業者は、工事に伴う事故やトラブルに備えて、損害賠償保険に加入しているのが一般的です。ただし、コストカットのために損害賠償保険に加入していない業者もいるため、依頼先を選ぶ際は保険に加入しているのかを確認しておきましょう。
まとめ
解体工事は、振動規制法によって振動の大きさや作業時間が規制されています。規制基準に従って作業を進めても振動はゼロにはできないので、近隣住民が感じるストレスを軽減するためにも、事前に近隣に挨拶を行ったり、作業時間に配慮したりすることが大切です。トラブルやクレームが発生した際は、解体業者と相談しながら、可能な限り早く対応しましょう。